ジュネーヴ大劇場 著 / Grand Théâtre de Genève
プッチーニ最後のオペラは謎解きに満ちている。北京の紫禁城に君臨する中国の皇帝。その未婚の娘トゥーランドット姫は、求婚者たちに試練を与えては、その手を断ち切らせている。夫となる条件は3つの謎を解くことだが、解けなければ斬首の刑である。既に何人もの不運な求婚者がこの試みに失敗し、首を落としてきた。今度はダッタン国の王子カラフの番だ。トゥーランドットの美しさに魅了されたカラフは、「希望」、「血潮」、そして「トゥーランドット」という3つの謎を解き明かし、皆を驚かせる。皇帝が約束した通り、姫はカラフのものとなるはずだが、トゥーランドットはその約束を守ろうとはしない。
プッチーニは《トゥーランドット》の作曲を第3幕で中断した。1924年、最後の二重唱を完成させる前にこの世を去り、弟子のアルファーノが補筆し完成させた。1926年、ミラノ・スカラ座での世界初演は、プッチーニへの一種の鎮魂歌でもあった。アルトゥーロ・トスカニーニは、プッチーニが残した最後の音符まで指揮した後、タクトを置いてこう言った。「ここでマエストロはペンを絶ち、亡くなった」
その後、アルファーノの書いたフィナーレによって、このオペラは世界の舞台に立つことになったが、完全に受け入れられることはなかった。そのため、リコルディ出版社はイタリアの偉大な作曲家ルチアーノ・ベリオに、あまり大げさでない新しいフィナーレを依頼したのである。ベリオのフィナーレは、作曲家が亡くなる前年の2002年に完成し、今回のジュネーヴ公演でスイス初演を迎える。
ダニエル・クレイマーによる新しい演出は、古いおとぎ話をトゥーランドットの魔力と権力が支配する近未来的な世界に移し替えたものである。『ハンガー・ゲーム』を彷彿とさせるディストピアのゲームショーで、女になることを拒んだ女の政権は、男を淘汰し、人類の生殖と繁殖を機械施設で行うという監視国家を発足させる。アメリカ生まれの監督は、男女間の戦いの古風な本質を思い起こさせるのだ。
当公演では、国際的に大きな評価を得ているアート集団チームラボが、初めてオペラの大規模なセノグラフィーを手がけ、これまでオペラの舞台では見られなかった最先端のビジュアル・テクノロジーを駆使する。チームラボの光の作品は世界中で展示されており、前衛的な空間の流れの中に観客を埋没させ魅了する、没入的な芸術体験を創り出す。
2019-2020シーズンに《アイーダ》で印象的なジュネーヴ大劇場デビューを果たし、昨シーズンは新型コロナウイルス対策で上演不可能となったこの《トゥーランドット》に代わる《チェネレントラ》を成功させた、イタリアンレパートリーの公演で名高いアントニーノ・フォリアーニが再びタクトを振るう。《エレクトラ》に続き、インゲラ・ブリンベリが氷の姫トゥーランドットとしてドラマティックな歌声を披露。若きソプラノ歌手オルガ・ブスイヨクは、光り輝くリューに純真無垢な声を捧げる。
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作曲:ジャコモ・プッチーニ
指揮:アントニーノ・フォリアーニ
演出:ダニエル・クレーマー
セノグラフィー、デジタル&ライトアート:チームラボ
ステージデザイン:
チームラボアーキテクツ
衣裳デザイン:中野希美江
照明:サイモン・トロテット
ドラマツルグ:ステファン・ミュラー
合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ
トゥーランドット:インゲラ・ブリンベリ
アルトゥム皇帝:クリス・メリット
ティムール:リアン・リ
カラフ:テオドール・イリンカイ
リュー:オルガ・ブスイヨク
ピン:シモーネ・デル・サヴィオ
パン:サム・ファーネス
ポン:ジュリエン・ヘンリック
マンダリン:マイケル・モフィディアン
合唱:ジュネーヴ大劇場合唱団、ジュネーヴ音楽院合唱団
管弦楽:スイス・ロマンド管弦楽団