Nirvana

teamLab, 2013, Digital Work, 8 channels, 6 min 20 sec. (loop)

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伊藤若冲(1716 – 1800)は、近世日本の絵師の一人。江戸時代中期の京都にて活躍した。若冲は、画面全体を数万もの升の形に区切って升目ごとに彩色する、『升目画』という特異な表現方法を残している。本作品は『鳥獣花木図屏風』や『樹花鳥獣図屏風』をモチーフにしている。 升目画は、どこかコンピュータの機能的制約から生まれたピクセルアートに通ずるところがある。若冲の升目画は、西陣織(京都西陣で織られる伝統的高級絹織物)の制作工程の工業的制約か、もしくは、それに触発されて描かれたのではないかという説がある。ピクセルアートも機能的制約で生まれたが、機能的制約がなくなった現在でも、表現のひとつとして愛されている。升目画に、直感的に感じるデジタル感とは、そんなところではないかと思っている。升目画は、ひとつの升目ごとに何種類かの色彩を使って四角の中に模様を描いており、印象主義や点描主義よりも以前から、視覚混合の光学現象を意識して表現しているかのように思える。 

本作は、仮想の三次元空間上で動植物を立体物として動かし、その空間を「超主観空間」によって映像作品にしている。 そして、視覚混合の光学現象を利用するために、三次元空間上の色を、画面の升目ごとに、升目の中の何重にも描かれた模様によって、分割して彩色している。たとえば、ある升目の模様が赤と青で彩色されていたら、その部分は三次元空間上では紫だった部分である。 画面の升目が固定されたまま空間は動いていくので、升目内の彩色は空間とは違う時間軸でうごめく。遠くで全体を見た時、視覚混合による鮮やかに輝く色彩は、遅い時間軸で動いていく空間の動植物の世界。近くで凝視した時、升目ごとに細かく描かれた模様によって分割された色彩は、速い時間軸で変化していく世界。ふたつの時間軸が共存する升目画のアニメーションという新しい視覚効果を、超微細な圧倒的情報量の作品として表現した。 

部分によっては、升目をピクセルとして見立て、升目内のもっとも多い色で塗りつぶして描いている。空間上の動植物が動くたびに、画面内で固定化された升目でピクセル化されていく。ピクセルアートとはまた違う新たな視覚表現をつくっている。 また、空間上で動いている立体の動植物を、三次元の固定化された升目で抽象化した新たな視覚表現の立体升目画のアニメーションも織りまぜている。