Relationships Among People

2001

人々の関係性を変化させ、他者の存在をポジティブな存在に変える

例えば、絵画は鑑賞者の存在やとなりの人のふるまいによって変化しない。作品は個人との関係の上に成り立っている。少なくとも、これまでのアートの多くは、鑑賞者にとっての他者の存在は、単に邪魔な存在だった。展覧会で人がいなければ、すごくラッキーだと思う。

作品が、鑑賞者の存在やふるまいによって変化する時、鑑賞者と作品との境界線はあいまいになる。作品は、鑑賞者を含めて作品となっている。そして、同じように、他者の存在でアートが変化したとき、他者もアートの一部になる。そのことは、作品と個人との関係を、作品と集団との関係へと変えていく。5分前に他の鑑賞者がいたかとか、今、となりの人がどんなふるまいをしているかが、重要になってくる。

デジタルアートは、同じ空間にいる人々の関係性に変化を与えることができるのだ。
そして、他者がアートに介入したり操作したりする意思があるかないかは関係なく、他者の存在によるアートの変化が美しければ、他者の存在はポジティブなものにもなりえるだろう。

アートだけではなく、近代の都市において、他者の存在は人間にとって不快なもの。理解もできないし、コントロールもできない他者が周囲にいることは、我慢して受け入れるものだった。それは、都市が自分や他者の存在によって、変化しないからだ。都市が、デジタルアートになるならば、都市においても、他者の存在がポジティブな存在になる可能性があると考えている。そのように、このデジタルアートによる人々の関係性への模索は、アートの領域を超え、都市のありようを考え直すきっかけとなるだろう。