増殖する生命の倒木 - 次郎杉 / Ever Blossoming Life Tree - Fallen Jiro Cedar

teamLab, 2021, Digitized Nature, Sound: Hideaki Takahashi

増殖する生命の倒木 - 次郎杉 / Ever Blossoming Life Tree - Fallen Jiro Cedar

teamLab, 2021, Digitized Nature, Sound: Hideaki Takahashi

かつての大型台風(1964年)で倒木となった大木の幹の内側の腐り落ちた空洞に、花々が永遠に咲いては散っていく。一時間を通して一年間のこの地域の花々が咲いては散り変化していく。花々は生まれ、咲き、やがては散って死んでいく。つまり、花々は誕生と死滅を永遠に繰り返し続ける。 


江戸後期(1842年)に造られた偕楽園の大杉森は、知覚できないほどのゆっくりとした時間の流れで日々変化し、そして、それを毎年繰り返しながら、果てしない長い時間が積みあがった空間である。倒木される前の大木は、おそらく造園前からここにあった木であろう。倒木後は、崩れ落ちた空洞は、時間が止まったような時空である。そして、この生と死を繰り返す花々も、また異なる時間の流れを持つ。ここでは様々な時空が交差し重なり合う。


自分という存在は、圧倒的な時間の長さの、永遠に繰り返されてきた生命の生と死の連続性の上にある。しかし、日常では、なかなかそれを知覚することが難しい。人間は自分の人生より長い時間を認知できないのだろう。時間の連続性に対して、認知の境界があるのだ。


圧倒的長い年月をかけて形作られた倒木の空洞に、花々の誕生と死滅が永遠に繰り返された時、長い時間の連続性に対する認知の境界を超えて、長い時間の生命の連続性の上に我々が存在することを表現できるのではないかと考えたのだ。


作品は、コンピュータプログラムによってリアルタイムで描かれ続けている。あらかじめ記録された映像を再生しているわけではない。全体として以前の状態が複製されることなく、永遠に変化し続ける。今この瞬間の絵は二度と見ることができない。