質量のない雲、彫刻と生命の間 / Massless Clouds Between Sculpture and Life

teamLab, 2020, Interactive Installation, Sound: teamLab

質量のない雲、彫刻と生命の間 / Massless Clouds Between Sculpture and Life

teamLab, 2020, Interactive Installation, Sound: teamLab

生命とは、エネルギーの秩序なのだ。
作品空間に、生命と同じように、エネルギーの秩序を創った。そうすると、巨大な白い塊が生まれ、浮き上がる。これは、エネルギーの秩序の可視化とも言える。

この巨大な白い塊である彫刻は、質量の概念を超越し、地面に沈むこともなく、天井まで上がりきることもなく、空間の中ほどを漂う。この浮遊する彫刻は、空間と身体との境界が曖昧で、人々はこの彫刻に身体ごと没入できる。この彫刻は、人々によって壊されても、生命と同じように自ら修復する。しかし、生命がそうであるように、塊は、自ら修復できる範囲を超えて破壊された時、修復が追いつかず崩れていく。逆に、人々がこの空中に浮遊する彫刻を動かそうと、押したり、横にのけようとしても、動かすことができないし、人々が風をあおげば、彫刻は壊れてしまう。人間の単純な行為では、この彫刻を動かすことすらできないことを知る。

生命とは何か。例えば、ウイルスは、生物学上の生命の最小単位である細胞やその生体膜である細胞膜も持たないことや、自己増殖することがないことから、生物と無生物の境界領域に存在するものと考えられている。生物と無生物を分かつものが何であるかは、生物学上、未だに定義ができない。

一方、あなたが明日もあなたであり続けているのは、形あるものが崩れていく「エントロピー増大の法則」に反している。つまり、エントロピー(無秩序の度合いを表す物理量)が極大化に向かうとされている宇宙の中で、生命とはその方向に反している存在なのだ。生命は、古典的な物理の法則に反する、超自然現象である。

1977年にノーベル化学賞を受賞した化学者・物理学者のイリヤ・プリゴジンは、自然界には外部からエネルギーを取り入れて、内部でエントロピーを生産し、そのエントロピーを外に排出することによってのみ形成され、非平衡状態の中で維持されるある種の秩序・構造が存在する事を発見した。エネルギー(および物質)を外部に散逸させてエントロピーを外部に捨てることによって内部のエントロピーを減少させて秩序を作り出す。生命体は外部から食物としてエネルギーを取り込み、排泄物としてエントロピーを外部に捨て、エントロピーを維持しているとも言える。

最後に泡について。現代の生物学上定義されている全ての生物は、細胞でできている。そして、全ての細胞は、脂質二重層で構成された細胞膜で包まれている。二重層の外側は親水性、二重層の層と層の間は疎水性で、包んでいる袋の外側も内側も水である。この細胞膜と同じ構造である、脂質二重層の袋状のものを、ベシクルという。
泡も、脂質二重層の膜に包まれているベシクルで、この白い塊を構成している泡は、構造的には細胞膜と同じである。ただし、泡の二重層は細胞とは逆に、二重層の外側は疎水性、二重層の層と層の間は親水性になっているため、袋の外側も内側も空気である。
つまり、細胞が水中のベシクルであるならば、泡は空気中のベシクルである。

この彫刻は、生物の最小単位である細胞と同じ構造の物質と、エネルギーの秩序によって創られたものと言える。